市役所内の職員がシンクライアント端末から利用、
安定した稼働を続ける VMware Horizon
岐阜県海津市は2010年にブレードPCを導入し、市役所内の職員が約460台のシンクライアントから利用するデスクトップを運用してきました。このブレードPCがリプレース時期を迎えたのを機に、新たに導入したのがVMware Horizonを基盤とするVDI(仮想デスクトップ)です。2016年に稼働したこのVDIは2020年の現在にいたるまで安定した稼働を続けており、職員に対して快適なデスクトップ環境を提供しています。同時にシステム運用コストの削減やトラブル発生時の作業負荷軽減にも貢献しています。

海津市
総務部総務課情報係係長
長谷川 淳 氏

海津市
総務部総務課情報係主任
大橋 拓巨 氏

海津市
総務部総務課情報係主任
伊藤 高典 氏
導入前の課題
- シンクライアントにデスクトップを配信する運用基盤として利用していたブレードPCにリプレース時期が迫った
- ブレードPCに接続ができないなどトラブルが発生した場合、解決までに長時間を要するケースがあった
- 物理PCにリプレースした場合、トラブル発生時に運用管理者が駆け付けて対処する必要がありサポートの手が回らない
導入効果
- シンクライアント上でUSBメモリやカードリーダーなどを引き続き利用できる柔軟なVDI環境を実現
- 流動割り当て方式によるリソースの有効活用およびサーバVDIを採用したコスト削減
- リモートからのトラブル対応や保守対応により仮想デスクトップの運用管理に関する作業負荷を軽減
デスクトップ運用基盤の新たな選択肢としてVDIを検討
岐阜県の最南端に位置する海津市は、旧海津郡海津町、平田町、南濃町の合併により2005年3月28日に誕生しました。東海地方の代表的河川である木曽・長良川が東境を、揖斐川が中央部を流れ、「水と緑と人がきらめく輪でつながるまち」として知られています。
この海津市が、誕生時から注力しているのが市政のデジタル化です。近隣の大垣市のCATV会社から光回線を引き込んでネットワークを強化するほか、2010年にサーバ環境をVMware vSphereによって仮想化。市役所内で職員が利用する約460台のデスクトップをブレードPCによるシンクライアント化し、デスクトップを運用してきました。
ただ、このブレードPCも経年による老朽化は避けられず、2015年にリプレースの時期を迎えました。これを機に海津市が、デスクトップ運用基盤の新たな選択肢として検討を進めたのがVDI(仮想デスクトップ)です。
海津市 総務部総務課情報係係長の長谷川淳氏は、「その頃、ブレードPCはすでに世の中の標準ではなくなっており、新機種へ更新しようにも選択肢は限りなく狭められてしまい、将来性もありません。とはいえ物理PCに舞い戻ったのでは、トラブルのたびに現場に駆け付けなくてはならずサポートの手が足りません。そこで総務省から公開された当時の『地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン』に示された要件を満たしつつ、シンクライアントによるデスクトップ運用形態を維持できる仕組みとしてVDIに注目しました」と話します。
こだわったのは「流動割り当て方式」による運用が可能なこと
市役所内で利用するデスクトップ環境をブレードPCからVDIへ移行するにあたり、海津市がその基盤として選定したのがVMware Horizonです。
「私たちはもともとサーバ仮想化環境で利用してきたVMware vSphereの高い信頼性を熟知しており、同じハイパーバイザーで運用するVMware Horizonには大きな安心がありました。また、ブレードPC時代と同様にシンクライアント上で引き続きUSBメモリやカードリーダーを利用できるようにする必要があり、柔軟な運用設定を行えるVMware Horizonに注目しました」(長谷川氏)
加えて海津市がVDIへの移行に際して注目したのが、ブレードPCではできなかった「流動割り当て方式」に対応した運用が可能なことです。
一般的なVDIは、ユーザーと仮想デスクトップを1対1で紐づける「専用割り当て方式」で運用しています。これに対して流動割り当て方式は、その時点で空いている仮想デスクトップを各ユーザーに割り当てるのです。
専用割り当て方式ではユーザーの数だけ仮想デスクトップおよびゲストOSのライセンスを用意しなければなりませんが、流動割り当て方式ならば同時接続で利用するユーザーの最大人数分だけ仮想デスクトップを用意すれば済みます。結果としてITリソースの消費を削減し、OSのライセンスも抑えるなどコストを削減します。
なお、流動割り当て方式を採用した場合でも、ユーザーのプロファイル情報などは仮想デスクトップの外に置いておくことでログイン時に呼び出すことが可能です。
先述のとおり海津市では約460台のシンクライアントを運用していますが、そのすべてが常時稼働しているわけではありません。また、公共工事の設計を担当する技術職や介護を担当する専門職など、一部の職員には業務の継続性を担保するために専用の仮想デスクトップを割り当てる必要がありますが、さまざまな住民サービスや窓口業務、県や国との連絡業務などを担っている大半の職員は標準的なデスクトップで十分に業務をこなすことができます。「ログオフするたびに仮想マシンが初期化されるのでセキュリティ面でも安全」、「トラブルが起きた際もいったんログアウトし、再度ログインしなおすことで新しい仮想デスクトップが割り当てられてすぐに業務が再開できる」など、流動割り当て方式のVDIならではの利便性を職員に提供できる点を海津市は重視しました。
「私たちのような地方自治体にとって、こうしたより多くのメリットを得られる流動割り当て方式のVDIを利用できることがVMware Horizonの決め手となり、導入にいたりました」(長谷川氏)
なお、海津市はブレードPCからVMware Horizonへ移行するにあたり、仮想デスクトップのゲストOSをWindows 7からWindows Server 2012 R2へと変更しています。いわゆる「サーバVDI」を導入したのです。
サーバVDIはマイクロソフトも公式に容認した方式で、VDA(仮想デスクトップアクセス)ライセンスが不要になるというメリットがあり、先述の流動割り当て方式との合わせ技でより低コストでVDIを運用することが可能となります。
担当者が自席からVDIの稼働状況を把握、運用業務の負荷軽減に貢献
2016年3月、VMware Horizonを基盤とする新たな仮想デスクトップが稼働を開始、現在にいたるまで、仮想デスクトップは安定した稼働を続けています。
「OSの見た目が変わったこと以外、大半の職員が基盤変更に気づかなかったほどスムーズな移行を実現できました」と長谷川氏は当時を振り返ります。また、毎年入庁する職員も特別なトレーニングを受けることなく、スムーズに操作を習得しており仮想デスクトップは組織全体に定着しています。
一方でVMware Horizonは、運用業務の負荷軽減にも大きく貢献しています。
海津市 総務部総務課情報係主任の大橋拓巨氏は、「ユーザーと仮想デスクトップを1対1で紐づけない流動割り当て方式を採用したことが功を奏しています。例えばデスクトップがハングアップしたと連絡を受けた場合、リモートからそのセッションを切断し、あらためてログインし直してもらうだけで別の仮想マシンが割り当てられるなど、職員の業務への影響を最小限に抑えることができます」と話します。
続けて総務部総務課情報係主任の伊藤高典氏も、「仮想デスクトップに接続できないといったトラブルが発生した際にも、自席で管理コンソールを立ち上げてVDIの稼働状況を把握し、対処することができます。以前のようにブレードPCを運用しているマシンルームやユーザーの部署まで出向く必要がなくなり、復旧までの時間は半分以下に短縮されています」と話します。
もっとも、このVDIも稼働開始からすでに4年以上が経過しています。近いうちにハードウェアの更新を検討しなければならない時期を迎えているのですが、海津市は上記のような成果を高く評価し、引き続きVMware Horizonを検討していきたいという意向を示しています。
「現時点では仮想デスクトップを利用できるのは市役所内だけに限られるのですが、職員の働き方改革に対応すべく、2021年度を目標に在宅からも利用可能な環境整備を進めていきたいと考えています。これにあわせてリモートアクセス環境でセキュリティを担保する仕組みや、仮想デスクトップ上でビデオ会議の快適に動作させる仕組みなども検討していかなければなりません」と長谷川氏は語っており、海津市は次のステップに向けVDIの活用に乗り出そうとしています。
お客様情報
お客様名 | 海津市 |
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WEBサイト | https://www.city.kaizu.lg.jp/ |
カスタマープロフィール | 岐阜県の最南端に位置しており西部・南部を三重県に、東部を愛知県に接している。人口は3万3,711人(2020年10月1日現在)。豊かな自然が住民の生活に密着し、やすらぎと潤いを与えるとともに、河川によってもたらされた肥沃な土壌に培われた豊かな田園地帯が広がっている。黄金色に輝く天然温泉の「海津温泉」など観光スポットも豊富。 |
導入環境 | VMware Horizon |
※本文中に記載されている会社名及び商品名は、各社の商標または登録商標です。
※本記載内容は2020年9月現在のものです。