社内に散在していた物理PCをVMware Horizonで仮想化
VMware vSANベースのHCI上に業務システムも集約し、
運用管理の負荷軽減と操作性向上を実現
秋田県南部を営業区域とする路線バスや高速バス、観光バスなどの事業を行っている羽後交通株式会社(以下、羽後交通)は、そのビジネスにおいてITの比重がますます高まる中で、これまでばらばらに運用していた物理PCをVMware Horizon により仮想化。VMware Horizon環境と業務システムの統合仮想基盤としてVMware vSANをベースとしたHCI「Dell EMC VxRail」を導入しました。これにより管理本部が本業との兼務で行っていた運用管理の負担を軽減するとともに、各事業所で働く社員に対しても快適なデスクトップ環境を提供しています。
導入前の課題
- 社内には機種やソフトウェアのバージョンが異なる物理PCが散在
- 専任のIT部門がなくシステムの運用管理が重い負担となっていた
- Windows 7からWindows 10への移行が急務
導入効果
- 各社員のデスクトップをVMware Horizonにて仮想化、一元管理を実現
- ハードウェアのメンテナンスやソフトウェアのライフサイクル管理の工数を削減
- VMware vSANの検証済みアプライアンス製品である Dell EMC VxRailを導入することで仮想基盤の短期構築を実現

羽後交通株式会社
取締役 管理本部長
出雲 幸司 氏
全体像を把握できていなかったIT基盤を仮想化して刷新
秋田県南部を営業地域とし、県内で最大規模となる路線バスをはじめ、高速バスや観光バスを運行する羽後交通。もともとは横手地方と日本海沿岸を結ぶ鉄道会社として1916年(大正5年)に創業した長い歴史をもつバス会社ですが、現在ではITなくして事業が成り立たない状況となっています。
同社 取締役 管理本部長の出雲幸司氏は、「例えば高速バスや観光バスに関して、スマートフォンやパソコンに対応した予約サイトを用意しなければ、お客様に大変なご不便をかけてしまいます。特にコロナ禍にあって対面販売は避けられる傾向にあり、関連会社の旅行部門もオンラインでのビジネスにシフトしています。また、バスの安全管理の観点からドライブレコーダーやデジタルタコグラフなどの装備が必須となっており、それらの機器から収集したデータを管理する仕組みとしてもITは欠かせません」と話します。
とはいえ従業員数280人の羽後交通にとって、専任のIT部門を設けるほどの人的リソースの余裕はありません。出雲氏をはじめとする管理本部のメンバーが本業と兼務しながら何とかシステムを運用していたのですが、できることには限界があります。
「ライフサイクルを考慮した導入計画を立てる余裕がなく、必要に応じてその都度サーバーやPCを導入してきたため、機種やソフトウェアのバージョンはばらばら、ネットワークも継ぎ接ぎの状態になっていました」と出雲氏は明かします。
そこで羽後交通はIT資産を外部パートナーのデータセンターに移すとともに、運用をアウトソースすることで負荷を軽減したいと考えたのですが、既存システムの正確な全体像を自分たちでさえ把握しきれていない状態では第三者への移管は困難です。「これが仮想化による基盤刷新のきっかけとなりました」と出雲氏は話します。
社員が利用するデスクトップ環境をSBC方式で配信
この構想がスタートしたのは2018年8月のことで、社内に約150台あるPCの大半が使用していたWindows 7にはサポート終了の期限が迫っていました。そこで羽後交通はSBC(Server Based Computing)方式によるデスクトップおよびアプリケーションの仮想化とVDI(仮想デスクトップ)に着目。その基盤をデータセンターに構築することにしました。
「この方法ならば各部門の社員が利用する端末をシンクライアント化し、Windows 10環境はもとよりOfficeなどの業務ソフトも公開アプリケーションとしてネットワーク経由で配信することができます」と出雲氏。また、人事異動により社員が別の事業所に移った際にも、ユーザープロファイルを変更するだけで使い慣れたデスクトップを継承できるなど、「今後の柔軟な運用が可能となる面でもSBC方式には大きなメリットがあります」と強調します。
では、この仮想基盤をどのようなソリューションを用いて構築するのか。羽後交通が選んだのはVMware Horizonです。「小規模な環境であれば様々な選択肢がありましたが、150台というそれなりの規模のデスクトップ環境を移行するとなれば、やはり仮想化のスタンダードであるVMware vSphereをベースとするVMware Horizonがベストと考えました」と出雲氏は語ります。
加えてVMware Horizonは本来の機能としてVDI(仮想デスクトップ)での展開も可能であり、保険業務などの専門業務を担当している社員に対して、SBC方式では対応できない個別のデスクトップを提供することができるという点でも優位性がありました。
なお、一日も早い基盤構築と早期移行を実現するため、羽後交通ではVMware Horizonの統合仮想基盤として、VMware vSANの検証済みアプライアンス製品である Dell EMC VxRail(以下 VxRail)を導入しました。
これは導入パートナーの株式会社渡敬(以下、渡敬)と株式会社日立システムズ(以下、日立システムズ)が、基盤の早期構築や運用管理負担の軽減を考慮して行った提案によるものです。
VxRailは共有ストレージを用いた3層構造の仮想基盤を構築する場合と比べて、設計やサイジングから始める必要はなく、構築期間やコストを大幅に削減することができます。
また、VxRailはデル・テクノロジーズとヴイエムウェアが共同開発したHCI(ハイパーコンバージドインフラ)製品であるため、ハードウェアから仮想基盤のレイヤーまでワンストップのサポートが受けられるなど、他ベンダーのHCI製品と異なり障害時の原因切り分けで苦労させられる心配がありません。
上記の2点が渡敬と日立システムズの提案における重要なポイントとなっています。
シンプルかつ効率的なインフラ運用を実現
羽後交通におけるデスクトップ仮想化と業務システムの移行プロジェクトは2020年4月に開始。パートナーのデータセンターへの機器の搬入、社員のデスクトップ環境や業務システムの移行を経て、2020年10月に本番稼働に至りました。
これによりシステム運用は大きく改善されました。
まずは、仮想基盤全体の可視化です。VMware vCenterでHCI環境を一元的に把握することが可能となり、運用管理負担が軽減されました。
「物理的に分離された環境ではPC管理が困難でしたが、VMware Horizonであればすべての社員のデスクトップを一括管理ができます。ハードウェア故障によりデータが失われるリスクが減り、老朽化したPCのバッテリーの交換などの手間もなくなります」(出雲氏)
次にソフトウェアの標準化です。Windows 10はもとより各種の業務アプリケーションについてもVMware Horizon上で一括して運用されているため、メンテナンスやライフサイクル管理が容易になり、今後のアップデートも計画的に行うことできます。
さらに利用面でも高い評価を獲得しています。「デスクトップの使い勝手について、これまでの物理PCと変わらないレスポンスが得られており、社員は快適に操作しています。あわせて約10台の物理サーバー上で動いていた業務システムもVxRail上に統合されたことで、シンプルかつ効率的なインフラを実現することができました」(出雲氏)
今後に向けて羽後交通は、この新たな仮想基盤を活用することで、ペーパーレス化による業務プロセスの効率化とスピードアップ、全社的な情報活用体制の強化を図っていく考えです。「システム運用管理の負担が軽減されたことで、これまで手薄だったヘルプデスクを充実させるなど、社員のサポートにも力を入れていきます」と出雲氏は語り、DX(デジタルトランスフォーメーション)を視野に入れた改革を進めていこうとしています。
お客様情報
お客様名 | 羽後交通株式会社 |
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WEBサイト | https://ugokotsu.co.jp/ |
カスタマープロフィール | 秋田県の横手地方と日本海沿岸を結び、地方開発と旅客、貨物の運送事業を営む目的で1915年1月13日に横手-本荘間の鉄道敷設免許を取得し、翌1916年10月24日に横荘鉄道株式会社として発足した。その後、1973年に鉄道を廃止してバス事業へ本格的に転換。秋田県内で最大規模のバス路線を運行している。 |
導入環境 |
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導入パートナー |
※本文中に記載されている会社名及び商品名は、各社の商標または登録商標です。
※本記載内容は2021年4月現在のものです。